日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔6〕のつづき)

◎一般来館者賞(ヒグチユウコ事務所)
『ヒグチユウコ画集 CIRCUS』
・プレゼンターより(博士課程 朴承民)
 駒場博物館で今年の4月から3か月間、2018年度において1年間の間に収集した展覧会カタログを、駒場博物館の来館者の方々に見ていただくことを目的に公開展示を行った。来館者アンケートで、人気のカタログ第一位に選ばれたのが『ヒグチユウコ画集 CIRCUS』であった。これは研究者と一般来館者のカタログを見る視線の違いを気づかせてくれたカタログでもあった。このカタログは展覧会会場で限定発売されたものであり、展覧会の思い出を持ち帰るという、記念としてのカタログの役割を充分果たしているものであると思う。

閉会の辞(東京大学准教授 出口智之)
 自身は明治時代の文学と美術の研究をしているが、カタログを研究に役立てようとした初めの経験は学部時代にさかのぼる。当時は資料、論文だけをコピーして持ち帰っていたが、本日の受賞者の皆さまのお話を伺い、カタログは単なる資料集ではなく、デザインや出版印刷、アートを含めた文化の最前線がその中に凝縮されているものであるということを強く感じた。そのような文化の最前線としてのカタログが各博物館、美術館、文学館で地道に、革新的につくり続けられているということに敬意を表したい。
ところで、自分の専門分野に関連して、幸田露伴が、1943年に講談社が出していた野間文芸賞を受賞した際のエピソードを紹介したい。そのとき75歳だった露伴は、講談社から受賞の連絡受けた際に、こう言ったと伝わっている。「 (幸田文にむかって)おい、野間のところで1万円くれると言っているが、お前いるか?」するとそれに応えて幸田文が「なくてもすむようには調えてございますが、あれば助かるものでございます。」と言う。それに対して露伴は「ではもらっておくよ。」と言って受賞を受け入れたということである。授賞式においては、講談社が「賞というものは、普通は与えるものでございますけど、私どもの賞は露伴先生に差し上げるのである、いや、差し上げるのですらない。もらっていただくのである。」と言っていたことが伝わっている。CatalToから受賞者の皆さまに差し上げられるものは、このカタログが好きだという熱い思いだけである。是非とも皆さまに差し上げたく、もらっていただけることを心より願っている。

(ここまでの文責:2020年2月18日 博士課程 金洲鉉)


CatalTo2018 記念パーティー

 CatalTo2018 記念パーティーには、学芸員、デザイナー、作家の方々をはじめ、授賞式に出席してくださった方々の多くが出席してくださった。入口付近のテーブルには、CatalTo2018の受賞カタログのほか、ノミネートカタログ、さらには昨年度の受賞カタログ、CatalPaの受賞カタログも展示された。彩り豊かなカタログを手に話がはずむ光景も見られた。部屋の奥には軽食と飲み物が用意され、グラスを片手に、より近い距離感において、学芸員、デザイナー、作家の方々と教員、学生が交流ができるなど、こちらも貴重な機会であった。
 パーティーの始めに、弥生美術館の『鏡花人形―文豪泉鏡花+球体関節人形』展に出展された人形作家の吉田良さまからご挨拶をいただき、その中では、CatalToの活動は作り手の立場にとってエネルギーになる、今後このような活動が続いて大きな会になり社会に認知されるようになってほしいとのお言葉をいただいた。続いて、横浜美術館の沼田さまより、ご自身は、展覧会とカタログの準備に日々追われているため、俯瞰的に色々な美術館の営みを見る機会がないが、そのような中で、CatalToの式は様々なカタログに触れられる良い機会であり、何よりも若い院生の人たちの視点からの意見を聴くことができ、現場の人間として刺激になり、励みになったとのお言葉をいただいた。
 このようにいただいたお言葉に、CatalToに関わる学生一同は大いに励ましていただいた。お忙しい中を遠方から受賞式にお越しくださった皆さまからは、興味深く貴重なお話に加え、私たちの活動についてもあたたかく優しいお言葉を賜った。この場を借りて改めて、深くお礼を申し上げたい。受賞式をとおして、活動に関わる学生や教員一人ひとりの、カタログそして展覧会についての見方や考え方が大きく変化した。我々にとってCatalTo2018の式典は、カタログや展覧会、そしてそれらをつくり上げる学芸員、デザイナー、作家の方々の存在がより身近なものとして感じられるようになった、かけがえのない経験であった。


(2020年2月18日 記念パーティー文責:中西麻依、金洲鉉)


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔5〕のつづき)

◎カタログヒットメーカー賞(LIXILギャラリー)
『海を渡ったニッポンの家具―豪華絢爛仰天手仕事』
『富士屋ホテルの営繕さん―建築の守り人』
『吉田謙吉と12坪の家―劇的空間の秘密』
『台所見聞録―人と暮らしの万華鏡』
・プレゼンターより(博士課程 金洲鉉、修士課程 南希宙)
 LIXILギャラリーのカタログは3年連続でCatalToにおいて選ばれており、さらに今年は4冊も選ばれた。LIXILギャラリーのカタログは、イラストを多用していて読みやすく手に取りやすい。そして、展覧会のテーマの選び方が独特で、生活に密着するものである建築や住まいに関する新しい視点を提供してくれる。薄いカタログでありながら、他の館のカタログに負けないくらい内容が充実している。

・受賞者より(LIXILギャラリー 筧天留)
 LIXILギャラリーの文化推進活動は1981年から始まった。展覧会の会場は10平米程の小さなスペースであり、ブックレットも80ページ程度の小冊子である。展覧会とは別に、カタログを書籍として流通させるため、カタログの中身は展覧会の内容を深める方向で作ってきた。この点は、他の展覧会のカタログとは異なる点であろうと思われる。私たちは、建築とその周辺をテーマにすることで、身近にありながらも、発見されてこなかった新しい世界、新しい視点を見つけ、皆さんと共有したいという思いで展覧会を企画している。ニッチでマニアックなテーマになる時もあるが、その際に助けとなるのがデザインであり、内容も魅力的で、分かりやすいものになるように作っている。また、私たちはこのカタログをある分野の入門書にしたいというスタンスで制作している。

◎大学美術館賞(武蔵野美術大学美術館・図書館)
『和語表記による和様刊本の源流 論考篇・図版篇』
『新島実と卒業生たち―そのデザイン思考と実践1981-2018』
・プレゼンターより(東京大学準教授 永井久美子)
 二冊において特出する点は、その印刷の再現性である。『和語表記による和様刊本の源流 論考篇・図版篇』には、版本の写真が原寸大で多数載せられているため、貴重な文章を実際に手に取っているかのような臨場感が味わえる。『和語表記による和様刊本の源流』を監修した『新島実と卒業生たち』のカタログと併せてみると、本は文字情報を伝えるだけでなく、形を持った美術作品であることに改めて気づかされる。近世の木版印刷を造本デザインの歴史の観点から捉えなおすという研究テーマが、教員と学生の創作活動にも結びついていることに美大らしさを感じた。美大の展覧会と聞くと収蔵品展と教員、学生の作品展という二つの柱を連想するが、実際にはその二つは連関するものである。武蔵野美術大学美術館・図書館は、美大の収蔵品が教育にどのように活用されているのかがよくわかるような展覧会を多く企画していると感じた。教育機関としての武蔵野美術大学の活動が広く伝わるように、今後もこのような展示を企画していただきたい。

・受賞者より(武蔵野美術大学美術館・図書館 西村碧)
 『和語表記による和様刊本の源流 論考篇・図版篇』は、文部科学省から助成金をいただいた研究事業の中で、5年間研究した成果を展覧会とカタログというかたちで発表したものである。2018年11月から開催し、展覧会カタログ二冊分のうち、まず図版編ができ上がり、半年遅れて論考編が完成した。展覧会は主に美術館で行われるが、美術品を扱う美術館と図書資料を扱う図書館が連携して展覧会や研究活動をサポートしている。『和語表記』展は美術館の中の造形研究センターで行われたものである。今まで近現代のデザインに関しては、あまり取り上げられてこなかったということもあり、最近はそのような、デザイン以前のものに関する研究が学内で行われている。このように、この展覧会に際して、明治以前のものに見られる日本の美意識を問い直す研究が行われた。カタログのサイズは、原寸大で史料を見せることを目的に決定した。まだ資料の復元作業が残されているが、今年中にその作業が完了する予定である。

(〔7〕につづく)
(2020年2月18日 文責:金洲鉉)


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔4〕のつづき)

・受賞者より(東京都庭園美術館 大木香奈)
 この展覧会はブラジルの日本人移民110周年を記念するもので、東京都庭園美術館と埼玉県立近代美術館の二館において開催している。会場では、ブラジルに拠点を置くベイ出版という会社が有する、ブラジルの先住民によってつくられた椅子のコレクションを紹介したが、これらの作品はブラジル国内でもあまり紹介されてこなかった。
 展覧会カタログに用いられている、動物が行進をしているかのような写真は、ベイ出版から提供された写真を用いているが、じつは全ての所蔵作品が同じ角度で撮影されており、これらの写真をカタログ内に盛り込むことには苦労をした。苦肉の策として生み出されたのが、このような動物たちが行進しているかのような構成であった。
 これらの椅子は、元々は儀式などに用いるために作られた神聖なものであるという背景をもつが、展覧会ではそのデザイン的な魅力を分かりやすく伝えることを心がけた。動物の行列というかたちは、結果的にこの目的に合うものになっていると思う。

(ここまでの文責:2020年2月18日 博士課程 中西麻依)


◎世代を超えるメッセージ賞(千葉市美術館)
『1968年―激動の時代の芸術』
・プレゼンターより(教養学部 東崎悠乃)
 1968年は自分にとって、両親が生れるより前の時代であり、自分から隔たりを感じる時代であるが、年代をピックアップしている点で面白い展覧会であると思った。時代の混沌と毒々しさを伝えてくれる刺激的なカタログである。芸術だけでなく、社会の様相まで写し込むという意味で刺激的である。1968年を経験した人にも、経験したことがない人にも手に取って頂きたいカタログである。

・受賞者より(千葉市美術館 藁科 英也)
 この展覧会を企画した学芸員の水沼啓和氏は昨年の12月20日に急逝し、私はその代理で受賞した。彼が自分の展覧会に積極的になったのは、2011年の秋に開催された『瀧口修造とマルセル・デュシャン』展からだった。その後、2014年の『赤瀬川原平の芸術原論』展を経て、昨年の『1968年―激動の時代の芸術』展へ至った。今回受賞の対象になった展覧会について私が感じたことは、この展覧会がテレビ的な構成になっているということだった。今回の展覧会の構成を見ていると、すべての出来事がテレビ的であり、それを当たり前のように思って育った人が構成した展覧会であると思った。それを本人に伝えたかったが、そのままになってしまった。皆さんに御礼を申し上げたい。

◎これっくらいではすまないで賞(東京都美術館)
『BENTO おべんとう展―食べる・集う・つながるデザイン』
・プレゼンターより(早稲田大学博士課程 町田樹)
 このカタログはお弁当を、人と人をつなげるメディアであると捉え、様々な角度から、人とお弁当が紡ぐ食文化について改めて考える機会を提供してくれる一冊である。このカタログにおいては、通常の展覧会カタログである「いただきます」編と、展覧会会場で行われたワークショップの模様を収録するために展覧会後に製作された「ごちそうさまでした」編の二冊に分冊されている点が特徴的である。「ごちそうさまでした」編は、作品や展示物はもちろん、展覧会というイベント自体をアーカイヴ化している。従来のカタログには見られなかった新機軸が盛り込まれているカタログである。

・受賞者より(東京都美術館 熊谷香寿美)
 東京都美術館は2012年にリニューアルをして、学芸員が企画をする展覧会を一年に一本ずつ開催するようになった。その中では、「現代作家」「アーツ&ケア」「アーツ&ライフ」の三つのテーマを設けている。今回の『BENTO おべんとう』展は「アーツ&ライフ」のテーマにあたる展覧会であり、食を通じてコミュニケーションを考えることを目的としている。カタログのデザインに関しては、二冊組で、二つのカタログをまとめるスリーブに穴が空いており、展覧会のロゴマークが見えるようになっている。またカタログと、カタログをまとめるスリーブの角を丸くすることにもこだわった。東京都美術館は、美術館が考え、提示することに対して、そこに足を運ぶ人それぞれが自身の方法で理解して、考えを深めることを大事にして企画展を作っている。この展覧会が若い院生の人たちに選ばれたということに感謝する。

(〔6〕につづく)
(2020年2月18日 文責:金洲鉉)


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔3〕のつづき)

 また文学面の監修は都留文科大学教授の野口哲也先生が主に引き受けてくださるなど、まさにクロスジャンルでありながら、作品も、文学の側面も大変充実した展覧会となった。初めて作家の方々の作品を目の前にしたときに、それらの人形は、人間ではない何かほかの生きものであるという印象を持った。一方で、泉鏡花が描く女性も、妖怪なのか魔物なのか、あるいは神様なのか、最後まで正体が分からない存在である。このような体験から今回のようなクロスジャンル的な展覧会、そして展覧会カタログが誕生した。
 カタログ作りで苦労した点としては人形を撮影するロケ地探しがあり、弥生美術館からごく近く、撮影に適した場所として東京大学本郷キャンパス内の三四郎池も候補地に含まれていたが、結局利用することが叶わないなどの困難な点もあった。

◎薄くても良いで賞(栃木県立美術館)
『工芸の教科書』
・プレゼンターより(日本学術振興会特別研究員 松枝佳奈)
 CatalToで選定される展覧会カタログには大きくて分厚いものが多い傾向があるように思われるが、このカタログの特徴は、小学生の時に使っていたノートや教科書を思わせるようなシンプルな装丁とその薄さである。しかし、その外観とは打って変わって、カタログの中では、小さな図版がたくさん用いられ、栃木県特産の工芸品である益子焼の制作工程などが、丁寧に分かりやすく説明されている。ページをめくっていくと、工芸の知識がない入門者でも、工芸の材料から制作工程までといった工芸の全てが分かるようにつくられているやさしいカタログである。それと同時に、専門家や研究者にとっても、傍らにおいておきたいと思えるようなものになっている。

・受賞者より(栃木県立美術館 鈴木さとみ)
 見た目は薄くても内容はあついカタログを目指した。近年、明治の工芸の超絶技法に注目が集まる中で、近代工芸について、その制作過程における苦労や、素材の特性、技法による作品の魅力を伝える展覧会を開催したいと思った。公立の美術館であるため、予算や出品できる作品などにも制約がある中で、一つ一つの出展作の個性に注目した展覧会を構成することを心がけた。栃木県にゆかりのある現代の作家の方々のアトリエを訪ねて、時にはそこで体験しながら、その制作の難しさ、特性、そしてそれらに由来するそれぞれの作品の個性を学び、展覧会で伝えることに努めた。
 初めは無料の小冊子として配布しようとして用意していた鑑賞ガイドは、伝えたいことを盛り込んでいくうちに内容が膨大になり、その内容を展示室に反映することも困難な程になったため、販売用のカタログにつくり替える方向に舵を切った。また、カタログの読みやすさを追求した結果、より大きな装丁に変更した。
 カタログの内容は、現代の作家の方々へのインタビューをもとに構成しているが、作家の方々は驚くほど細かにその制作方法を伝授してくださり、制作に関する情報漏えいが心配になるほどであったが、そのことについて、技法が知られたところで制作できるというわけではないという意見や、制作者の裾野を広げ、その先にある表現の領域で他の作家と競い合いたいというような作り手の言葉が聞かれ、新鮮な体験であった。
 このカタログは、今まであまり作品集を発表してこなかった現代作家の方々による作品を紹介できた点について、作家の方々から感謝の言葉をもらえたことに加え、展示作家の方々の、作品の発信についての意欲を高めるきっかけにもなったのではないかと思っており、結果としては栃木の文化の底上げにも貢献できたのではないかと考えている。

◎一般にもオススメで賞(東京都庭園美術館)
・プレゼンターより(博士課程 モハッラミプールザヘラ)
 この展覧会カタログはまず、デザインがとてもかわいく素敵である。一目見ただけでは椅子とは気づかない程の、芸術作品の写真が表紙になっている。カタログを開くと見開きページいっぱいに、まるで行進しているかのように動物たちが列をなしている。作り手たちの豊かな想像力を伝えるこのカタログは、眺めるだけでもとても楽しいものであるが、カタログの始めに付されているブラジルの地図や民族についての解説を読むと、ブラジルにある多様性についても知ることができるものになっている。またカタログに含まれる論文を読んでみると、人間と自然環境との関わりについて、また伝統と現代というテーマについても知ることができ、これらについて考えるきっかけを与えてくれる。


(〔5〕につづく)
(2020年2月18日 文責:中西麻依)


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔2〕のつづき)

 この展覧会カタログのデザインは中野豪雄さんによるものであり、中野さんはCatalToにおいて常連の受賞者である。デザインについて工夫した点の一つとしてやはりコールドフォイル印刷があるが、これは一般的な箔押しによる印刷よりもコストを抑えながら色彩にヴァリエーションを持たせることのできる方法である。表紙の金色の部分にもこの方法が用いられている。またコデックス装によって装丁を仕上げることで、本の背表紙は表紙でくるまずあえて剥き出しの状態になっているが、これによってページの開きがよくなり、カタログが閲覧しやすいものになっている。コデックス装は装丁の強度に弱点があるが、カタログのデザインを優先してこの方法を選択した。また、デザイナーの方と制作の方と折衝しながら、背表紙が黒色になるようページの刷りや折りを調整し、シンプルなつくりの中で繊細なデザインを達成する工夫をした。カタログを作ることはとても大変な作業だが、CatalTo表彰式のような、他の人の意見を聞くことができる場は、より良いカタログが生まれるきっかけを作り出し、今後のカタログ文化をより豊かにするものになると考えており、応援したいと思う。

◎クロスジャンル賞(横浜美術館)
『駒井哲郎―煌めく紙上の宇宙』
・プレゼンターより(博士課程 佐伯綾稀)
 今までも駒井哲郎についての展覧会はたくさんあったが、このカタログは駒井の、ジャンルを超えた活動の展開に焦点を当てている点で独創的である。カタログの冒頭では、駒井の制作初期の動向と並行してアルブレヒト・デューラーやオディロン・ルドンの作品が紹介されているが、自分の研究対象であるイタリア未来派のボッチョーニも同じくこのような作家を参考にしていることを考えると、駒井の制作動向もより一層おもしろく感じられた。駒井が実験工房などで作曲家や写真家とのコラボレーションを行っていたことや、舞台美術をも手掛けていたことはこの展覧会で初めて知り、興味深かった。駒井の晩年の作品には色彩の爆発を思わせるものもあり、胸に迫るものとして感じられた。
 展覧会カタログは読みごたえがあり、駒井と関連作家の間の書簡も紹介されており、そこから駒井の人柄が感じ取れた。この一冊で駒井哲郎が丸ごとわかるというような素晴らしいカタログである。

・受賞者より(横浜美術館 片多祐子)
 今回の展覧会では、これまで主に銅版画を一途に追求した作家として理解されてきた駒井の作品の、領域横断的な魅力に焦点を当てることを目標とした。文学者、詩人、音楽家などの多ジャンルの芸術家との交流という観点を軸に構成したため、クロスジャンル賞を受賞できてこの目標が達成されたように感じている。
 工夫した点として、駒井自身が書いた文章の魅力を伝えるため、駒井の言葉と図版を同時に鑑賞できるページ構成を行った点、また他ジャンルの作家との書簡を書き起こして掲載した点がある。苦労した点としては、駒井に関わった作家が多様なジャンルにわたり、その数も多かったため、それぞれの作品などについて著作権の保持者を探し求め、許可を取ることが困難であったことが挙げられる。この展覧会に際して、小さな失敗や反省もあったが、受賞を励みに今後も展覧会の企画を行っていきたい。

◎クロスジャンル賞(弥生美術館)
『鏡花人形―文豪泉鏡花+球体関節人形』
・プレゼンターより(東京大学特任講師 堀江秀史)
 泉鏡花の文学作品の魅力を言語的な制約から解き放つことには、近現代の芸術家たちの作品が大きく力を貸してくれたと言える。鏡花の文学がもつ懐かしさ、優しさ、怪しさ、ほの暗さ、色彩といったイメージは版画や映像などのかたちをとることでより広い人々に共有される。この展覧会カタログはそうした試みの新たな成果であり、鏡花文学の闇と幻に、言葉や平面芸術とは別の開路から潜り、浸る快楽を与えてくれるものであると言える。

(〔4〕につづく)
(2020年2月18日 文責:中西麻依)


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:(〔1〕のつづき)

◎CatalTo2018学術賞(福島県立博物館)
『戊辰戦争一五〇年』
・プレゼンターより(東京大学準教授 出口智之)
 戊辰戦争の歴史は、これまでロマンティシズムをもって語られるか、敗者の悲惨さが強調されるかたちで語られることが多かった。しかしこのカタログにおいては、薩長の側からでもなく、政府軍の側からでもなく、敗者の側から学術的に、そして客観的に事実をとらえようとする試みが実践されていることが感じられ、感動した。また戦闘の経過、それに加わった一人ひとりの人物、敗戦処理、戦後の慰霊や回想に至るまでを完全に網羅したカタログである点に衝撃を受け、「戊辰の戦役を目の当たりにせよ」とカタログの腰帯に書かせていただいた。またこのカタログは、敗者側に歴史、文化、文学という観点から光を当て、その活躍を追うことで、会津、二本松出身の、今日名が知られていない文化人を紹介する貴重なものにもなっている。

・受賞者より(福島県立博物館 阿部綾子)
 この展覧会は福島県立博物館、新潟県立歴史博物館、仙台市博物館の三つの館の共同企画として、約2年間を費やして準備した企画展である。戊辰戦争における出来事、当時の人々の視点、歴史背景、戦争の経過を、感情表現を排して客観的にそして丁寧に描写することを一つの目的としてきた。この企画展を組織した三館は敗者側、または劣勢に立たされた潘が本拠地としていた場所にあるという点で共通しており、明治150周年という節目に際し、敗者に注目しながらも戊辰戦争という一つの観点を通して、丁寧にその事実を紹介するということに、三館で手を取り合って尽力した。
 工夫した点の一つとして、カタログの表紙は写真や図、サブタイトルなどを排することで、シンプルに「戊辰戦争一五〇年」としたことがある。このことについては、敗者の視点からの戊辰戦争を象徴するイメージがなかなか見つけられなかったという事情もある。しかしそれ以上に、それぞれの地域において異なっている戊辰戦争のありかたに注目し、また一見すると一枚岩のようにとらえられがちな列藩同盟、会津藩の中にある多様性の存在にも注意した結果、どのイメージにも偏ることのないシンプルな表紙に決定したのだという点を工夫のひとつとして紹介したい。
 また展覧会、カタログの両方において、渋谷源蔵という会津藩士をナビゲーターとして登場させ、その個人が体験した出来事、また当時の出来事に対する渋谷源蔵の感想を逐次具体的に盛り込むことで、当時の人々の様子、視点を紹介することにも配慮した。

◎総合デザイン賞(印刷博物館)
『天文学と印刷―新たな世界像を求めて』
・プレゼンターより(修士課程 廣川千瑛)
 とてもたくさんの方々が、この展覧会カタログ、そして展覧会のチラシのデザインについての賛辞を口にしていた。その理由の一つとして、コールドフォイルという印刷技法によって、「天文学」という言葉から私たちがイメージするような、きらびやかなイメージの表現が達成されていることが挙げられるだろう。またチラシを集めて並べたくなるような仕掛けも見事である。集めたい、並べたい、見せたい、自慢したいという、人の知に対する欲望が刺激され、自分も天文学と印刷の世界にとりこまれていくように感じた。個人としては印刷博物館がとても好きであり、以前にも5回は訪れているが、人文知と権力がますます緊張関係のなかに置かれるなかで、誰が印刷し、それが誰の手に渡り、読まれてきたのかという構造を視覚的、そして学術的に見せてくれるこの博物館は貴重であり、これからも必要な館であり続けると強く確信している。

・受賞者より(印刷博物館 石橋圭一)
 展覧会についての来場者の方の意見をSNSやアンケートなどから得る機会はあるが、このような場において直接感想を聞けるのは嬉しいことである。印刷博物館では、印刷の歴史が人類にどのような影響を及ぼしたのかということを、様々な事例を用いて紹介することを目的として企画展を構成している。おおまかな印刷の歴史としては、15、16世紀にヨーロッパで生まれた活版印刷から、インターネットの登場を経て、主要なメディアが大きく変わるということがある。今回の展覧会ではこれを掘り下げて、印刷による本が爆発的に普及した時代に、天文学、特にコペルニクスの地動説が紹介されたことを扱った。このように教科書内では簡潔に説明される出来事であっても、その歴史背景として、メディアの変換と、コペルニクスの地動説の印刷、発表に関わった人物の存在についても触れることで、当時の学者と印刷者それぞれの人物像と、それらの人物の関係性についても紹介することを目的に構成した。

(〔3〕につづく)
(2020年2月18日 文責:中西麻依)


日時:2019年7月26日(金)15 : 50 - 19 : 00
場所:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3およびオープンスペース
出席者:学内外関係者51名
活動報告:15 : 50 - 18 : 00 CatalTo2018授賞式
(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム3)
18 : 00 - 19 : 00 CatalTo2019記念パーティー(於:東京大学教養学部駒場キャンパス18号館4階オープンスペース)

CatalTo2018においては、受賞カタログの作成に携わられた担当学芸員の方々や関係者の方々に加え、受賞カタログが紹介している展示作品を制作された作家の方々にもお越しいただき、カタログ作成、そして作品制作の現場について、今年もお話を聞かせていただいた。この式典に先立って6月7日に行われたCatalTo2018において、受賞カタログを選定した院生、教授が、それぞれが感じた受賞カタログの魅力を発表した。そしてそれに対しての担当学芸員の方々や作家の方々のご意見を伺えたとても興味深い機会であった。
以下はご挨拶、開会の辞、それぞれの受賞カタログへのプレゼンテーションと、担当学芸員・関係者・作家の方々のお話、閉会の辞をまとめたものである。(以下、敬称略とさせていただきます)

ご挨拶(東京大学比較文學會会長 菅原克也)
 CatalToの活動は、学生である大学院生が自身の目で「良いもの」を見つけ出し、それについて「語る」ことについて学ぶ場となっている。またCatalTo表彰式の場は、大学院生が、経験豊かでありながら現場において大変苦労をされている現役の学芸員の方々や展覧会関係者の方々の生の声をきくことができる「実地の学び」の一環とさせていただいており、大変貴重な機会である。

開会の辞(東京大学比較文學會編集委員・CatalTo担当 今橋映子)
 CatalToの活動および式典には東大比較文學會、展覧会・カタログ評院生委員会、駒場博物館展覧会カタログ資料室の三つの組織が関わっている。現役の院生から成る展覧会・カタログ評院生委員会の活動としてはまず、駒場博物館の展覧会カタログの蔵書をもとに、個々の院生がその専門を活かして展覧会・カタログ評を執筆し、それらを、50年以上の歴史をもつ『比較文學研究』に年間4本投稿していることが挙げられる。また一年間に全国で開催される展覧会の実態を調査し、毎年約250冊のカタログを新たに駒場博物館の蔵書として選定することも行っている。さらにこのCatalToの式典で紹介される受賞カタログを、委員の間でのプレゼンテーションを通して選定し、そのカタログを紹介する腰帯を独自に作成するなどといった活動を行っている。
 駒場博物館の展覧会カタログ資料室は、今後も永く駒場、そして日本に存在し続けるアーカイヴである。展覧会カタログとは、学芸員の方々が苦労をされ、企画された展覧会が終わっても残る、一つの財産である。そして研究者である我々はそれらのカタログを、ある領域の研究動向を知るひとつの大きな助けとしても活用させていただいている。
そのような中、このように大変おもしろい出版物である展覧会カタログを単にアーカイヴ化するというのはもったいないという思い、また展覧会カタログにまつわる動向を応援する気持ちを伝えたいという思いから始まったのがCatalToである。CatalToの活動の一部である批評という行為には常に責任が伴うということを、学生が自覚しながら学ぶ機会を、毎年お越しくださる学芸員の方々、関係者の方々に与えていただいている。また個人としては、若い学生が個々の斬新な視点で展覧会カタログを発掘することに期待もしている。

(〔2〕につづく)
(2020年2月18日 文責:中西麻依)

会場:世田谷美術館
会期:2019年4月27日(土)~6月23日(日)
評者:佐々木悠介
寸評: 第Ⅲ部は、小野が晩年に講師として通った高山建築学校と、さらにそこでの講師仲間であった石山修武の「世田谷村」(2001年)の展示だった。私自身は、小野二郎が建築分野にもこれほど深い関心と関わりを持っていたことを知らなかったので、この第Ⅲ部はまったく新しい発見になった。と同時に、ここまでくればこの展覧会の意図するところがはっきりしてくる。つまりこれは小野二郎の業績を回顧するための展示という以上に、小野が生きていたら見届けたであろう広大な文化的、芸術的風景を描き出そうとする展覧会なのである。だからこそ、ある時期小野と密接に関わった人たちがその後に成し遂げた仕事、つまり晶文社のさまざまな刊行物とか、世田谷村とか、そういったものが大事になってくるのである。

 第Ⅲ部の最後に、1980年の高山建築学校で小野が行った、15分程度のミニ講義の映像があった。『ガリバー旅行記』から始めてベラミーへ、モリスへと拡げながら、ユートピア思想とは、労働とは、芸術とは、とめまぐるしく話題を転じていく。冒頭でスウィフトに言及されるのを聞いて、すぐに堀大司の影響を思った。本展第Ⅱ部の年譜に、一高の「英語の担当教官に島田謹二と堀大司がいた」とあったのが、ここで繋がったのである。
 なお、この講義映像に見る小野二郎はすでにだいぶメートルが上がっていたのかも知れなくて(本展で小野が一升瓶を抱きかかえるようにして座っている高山建築学校の写真を観た後では、そう無理な想像というわけでもない)、話があちこち飛んだり、勢いで締めくくったりしたところはあるようにも見受けられたが、この映像を二回通して観て、やはり生前の小野二郎に会ってみたかったと強く思った。

 われわれが本展によって考えを改めなければならないのは、このようなことであろう。つまり小野二郎はモリス研究者として大学で教える傍ら、晶文社「も」やっていた、などというのではなくて、かくも多才でエネルギッシュな人物にとって、大学教員としての仕事は、日々の労働(ただしそれはモリス主義者のもっとも崇高な意味での「労働」だが)の一つに過ぎなかったのだ、ということである。

 このような、お客さんの入らなそうな展覧会を企画した世田谷美術館に、拍手を送りたい。これまでにも『フェリックス・ティオリエ』展のように、誰も知らない写真家の展覧会を敢行されるような(無茶な)ところはあったにせよ、本展の「閑古鳥」ぶりはきっとそれを凌駕するだろう。それでも本展は、ある種の人文系学術研究が20世紀後半の日本における出版界や芸術・文化活動と密接に関わり、しかも潜在的な社会運動ですらありえたことを、見事に示したと思う。

(文中敬称略)

会場:世田谷美術館
会期:2019年4月27日(土)~6月23日(日)
評者:佐々木悠介
寸評: 3月に「田沼武能写真展」を観に行って本展のことを知ったときは、少なからず驚いた。
 小野二郎(1929ー1982)と言えば、ウィリアム・モリスの研究者であり、われわれにとっては比較文学比較文化コースの大先輩であり、とくに狭義の「文学」の枠におさまらない分野をやっている者にとっては、大切な先達である(げんに私の研究室にも、書架の目立つところにその著書を何冊か並べてある)。明治大学で教鞭を執られ、同時に晶文社を興して出版界にも足跡を残した、という程度のことは知っていたが、展覧会の対象になる(それも文学館ではなく美術館の)とは思えなかった。しかし、面白い企画を次々と繰り出す世田谷美術館のことだから、きっとなにかあるのだろうという漠とした期待を抱いて、会期の三日目に足を運んだ。

 展示は三部構成で、さらに各部が数章に分けられている。
 第Ⅰ部は研究者としての小野と、ウィリアム・モリスを取り上げている。そのうち第2章には印刷博物館の所蔵するケルムスコット・プレス(ウィリアム・モリスの印刷工房)刊行の書物が、何冊も並んでいた。これだけまとめて実物を見ると、そのデザインの傾向を肌で感じることができる。なお、ケルムスコット・プレスについては明星大学がかなりのコレクションを持っているそうで、同大学で今年いっぱい、展示替えをしながら公開されているということを、このブログに大西さんが書かれた記事で知った。

 第Ⅱ部は、修士課程修了後の2年間の弘文堂勤務と、その後の晶文社での活動をとおして編集者としての小野二郎に光を当てている。敢えて言えば、この中の第2章は少々「晶文社」展の色が強すぎたかも知れない。たしかに小野が親友の中村勝哉社長と二人で興したのが晶文社だが、すべての本に同じように関与したわけではあるまい。そもそも没後に刊行された本も並んでいる。われわれとしてはもう少し、小野がどの本にどのように関与したのかというのを知りたかった。
 同社の面白いのは、人それぞれ抱くイメージが違うくらいに様々な分野の記念碑的な書籍を刊行してきたことで、たとえば私なら、中平卓馬の評論集『なぜ、植物図鑑か』、スーザン・ソンタグの『写真論』、それにリチャード・ブローティガンの『アメリカの鱒釣り』(この藤本和子訳は、ブローティガンを原書で読んだ後でもやっぱり手に取りたくなるような、不思議な魅力に満ちた翻訳だが、管見では『鱒釣り』は藤本の訳業の最初のもので、いったいどうしてこのようなキャスティングが可能だったのかと、感嘆の念すら覚えずにはいられない)とか、そういったものがまず真っ先に思い浮かぶ。
 そう言えば、『ボブ・ディラン全詩集』も晶文社刊であったことを、今回の展覧会で認識させられた(僕はボブ・ディランをよくわかっていないので)。少々脱線すると、本郷の文学部のウェブサイトに卒業生インタビューのコーナーがあって、今をときめく新政酒造の佐藤祐輔社長が登場している。曰く、卒論でボブ・ディランを取り上げたら、「あのころはボブ・ディランを文学と認めてくれなくて、ぼろくそに言われました。ところが今年、ボブ・ディランがノーベル賞をもらいましたね。時代が私に追いついたんでしょうか(笑)」(このインタビューはなかなか傑作なのでぜひご覧いただきたい)。しかし考えてみれば、同氏だって卒論を書かれる頃にはボブ・ディランを英語で読んだかも知れないけれども、きっとその精読プロセスの最初のほうに晶文社の『全詩集』があったはずだ。とすれば、時代が晶文社に追いついたとも言えるではないか。
 しかしだからこそ、晶文社のあの一連の70年代から80年代初頭の刊行物に、小野がどのように関わったのか、企画の段階で関与したのはどの書籍なのか、是非とも知りたかった。前述のもので言えば、ソンタグの訳者、近藤耕人は小野に謝辞を書いているが、『アメリカ鱒釣り』訳者あとがきに小野二郎の名前は見当たらない。

(下に続く)

会場:明星ギャラリー(明星大学日野校 資料図書館2階)
会期:2019年3月22日~12月21日(3期に分けて展示替えあり)
評者:大西由紀
寸評:

非常勤先の大学で開催中の貴重書コレクション展をご紹介します。

明星大学では、ウィリアム・モリスによる私家印刷工房、ケルムスコット・プレスの出版物の大部分を所蔵しているそうで、それを年代順に約20点ずつ、3期に分けて展示するコレクション展が始まりました。

第I期の現在展示されているのは、『輝く平原の物語』(1891年)に始まる初期の刊本18点に、全会期を通して展示予定の『チョーサー著作集』(1896年)。展示ケースの背景にもモリス・デザインのファブリックが使われていて(これは賛否分かれそうですが)、どっぷりとモリスの世界に浸れます。しかもフラッシュなしなら展示室内でも写真を撮り放題。

IMG_1897.JPG

これは訪問時間帯にもよるでしょうが、平日の授業時間中に見に行ったわたしの場合は、展示室をほぼ貸切状態で、ガラスケースを舐めるようにじっくりねっとり見て回れました(注:舐めてません)。活字部分の紙面の凹み具合とか、オーナメントのつながりとか、気になるところを気の済むまで眺めさせてもらえたのがありがたかったです。

それだけに残念だったことのひとつが、特別展示のアルビオン印刷機(ミズノプリテック株式会社所蔵)にかかっていたのが、ケルムスコット・プレスっぽい書体ではなかったことです。同じものは用意できないにしても、もう少し雰囲気の近いものか、ごく定番の活字にしておけば、と思いました。もうひとつ、展示の英文キャプションで、アポストロフィーを使うべきところがいわゆる「マヌケ引用符」になっていたのだけど、美しい書物にまつわる展示でコレはありえない。とはいえ、キャプションの印象なんて一瞬で上書きされるくらいに、出品物の物量感が圧倒的ではありました。

一部出品物の図版を含んだ無料の小冊子と、全会期分の出品リストに加えて、無料のオリジナルグッズもいろいろ用意されています。『黄金伝説』(1892年)の紙面を使ったブックカバー、装飾頭文字を使った栞(全10種類)、特製ラベルデザインのミネラルウォーターなどなど。SNS投稿や、3つの会期すべてに来場してスタンプを集めた場合にも、グッズのプレゼントが予告されています。

IMG_1902.JPG
ブックカバーをA5サイズ、厚さ約1cmの本にかけてみました。右開きの本の表紙側にタイトルが来るようにレイアウトされています。

入場無料、要身分証提示。

なお、学期はじめの現在、多摩モノレールは一部時間帯でたいへん混雑します。ご来館の際は、近隣大学の1・2限開始時刻(9:00、10:45~50)の前後を避けていらっしゃることを、強く強くお勧めします。

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